工務店の人手不足はなぜ起こる?原因と対策5選
工務店の人手不足はなぜ起こる?原因と対策5選
「求人を出しても応募が来ない」「今いる職人・社員の負担がもう限界に近い」——そんな悩みを抱える工務店の経営者は少なくありません。採用を強化するだけでは状況が改善しないケースも多く見られます。この記事では、人手不足の原因から今日から着手できる具体的な対策、対策が失敗しやすいパターンまで整理して解説します。
この記事でわかること
- 工務店の人手不足が起こる原因がわかる
- 人手不足を放置した場合に起こりうるリスクを理解できる
- 今日から着手できる具体的な対策がわかる
- 対策が失敗しやすいパターンと回避のポイントを学べる
1. 工務店の人手不足が起こる3つの原因

工務店の人手不足は、単なる「求人の出し方」の問題ではなく、業界構造そのものが抱える課題です。
原因を整理すると、主に以下の3点に集約できます。
原因①|職人・大工の高齢化と若者離れ
2024年時点で建設業就業者の55歳以上は36.7%、29歳以下は11.7%と、他産業に比べて高齢化が進み、若手の入職が追いついていません。(出典:国土交通省 令和7年版国土交通白書)
- 就業者数の減少:1997年の685万人から2025年は478万人まで減少(ピーク時比69.8%)
- 技能者数の減少:建設技能者は1997年の464万人から2025年は296万人へ減少(ピーク時比63.8%)
力仕事が中心で技能の習得に時間がかかるうえ、将来のキャリアが見えにくいことも、若者が建設業を選びにくい要因とされています。(出典:日本建設業連合会)
原因②|低賃金・長時間労働という労働環境
建設業は工期優先で業務が進むことが多く、長時間労働が常態化しやすい業界です。厚生労働省「毎月勤労統計調査」をもとにした比較では、建設業と全産業平均の年間実労働時間には約329時間(1日8時間換算で約40日相当)の差があるとされています。(出典:建設業の労働時間・賃金の比較データ)
- 長時間労働:全産業平均より年間約40日分多く働く計算になる
- 不定休:工期に合わせて休みが後回しになりやすい
- 手取りの薄さ:元請け・下請けの多重構造で、現場の技能者ほど取り分が薄くなりやすい
労働環境そのものを見直さない限り、採用を強化しても定着にはつながりにくいのが実情です。
原因③|2024年問題による受注圧迫
建設業には5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。主な内容は次のとおりです。
- 時間外労働は年720時間まで
- 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計は2〜6ヵ月平均で80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6回まで
この規制により、残業でカバーしてきた業務量を同じ人数でこなせなくなり、受注できる案件数そのものが制約を受ける工務店も出てきています。(出典:全日本不動産協会)
2. 放置すると工務店が失う3つのもの

人手不足を「今は何とか回っているから」と後回しにすると、じわじわと会社の体力を奪っていきます。ここでは、対策を先送りした場合に起こりやすい3つのリスクを整理します。
リスク①|受注機会の損失
人手が足りないまま受注を続けると、失注や工期遅延に直結します。繁忙期に対応しきれず案件を断る、既存案件の遅延で追加コストが発生するといった事態が起こりやすくなります。
- 繁忙期に受注を絞らざるを得ない
- 工期遅延によって顧客満足度が下がる
- 遅延対応のための残業・外注費で利益率が下がる
リスク②|社員・職人の離職連鎖
少人数で業務が回っている状態が続くと、一人当たりの負荷が増え、疲弊が進みます。離職の連鎖は新たな人手不足を招き、残った社員の負荷をさらに増やす悪循環を生みます。
リスク③|技術継承の途絶え
ベテラン職人が引退する前に、若手へ技術を引き継ぐ余裕がなくなることも大きなリスクです。
- 図面や納まりの「自社らしさ」が失われる
- 施工品質にばらつきが出やすくなる
- 差別化してきた技術力が徐々に低下する
3. 工務店が今日から始められる人手不足対策5選

「DXやICT活用が有効」と言われても、何から手をつければいいのかわからない、という声も少なくありません。ただ、対策は必ずしも大がかりなシステム導入から始める必要はなく、小さく始められるものも多くあります。
着手する際は、次の3ステップで進めると失敗しにくくなります。
- STEP①|業務量を洗い出す:見積・現場管理・設計提案など、どの業務に最も時間がかかっているかを整理する
- STEP②|効果が出やすい1つを選ぶ:洗い出した業務の中から、負担が大きく効果を実感しやすいものを1つ選ぶ
- STEP③|小さく試して定着させる:一部の案件・一部の社員で試験導入し、運用ルールを固めてから対象を広げる
まずは全体像を比較したうえで、自社に合うものから着手することが大切です。
工務店の人手不足対策5つの比較
対策 | 効果が出やすい業務 | 着手のしやすさ |
|---|---|---|
労働環境の改善 | 採用・定着全般 | やや時間がかかる |
採用ターゲットの拡大 | 採用 | 比較的すぐ着手できる |
DX・ICT活用 | 見積・現場管理・設計提案 | ツール次第ですぐ着手できる |
外注・アウトソーシング | 設計・積算・事務 | すぐ着手できる |
若手育成の仕組み化 | 技術継承 | やや時間がかかる |
対策①|労働環境の改善
長時間労働の是正や週休二日制の導入は、採用力と定着率の両方に効く対策です。工程管理を見直し、繁忙期に業務が集中しすぎない体制を作ることが出発点になります。
- 週単位での工程の平準化
- 週休二日制・変形労働時間制の導入検討
- 有給休暇を取得しやすい業務分担の見直し
対策②|採用ターゲットの拡大
従来の「若い男性」中心の採用から対象を広げることも有効で、女性・シニア人材に加え特定技能制度による外国人材の受け入れも選択肢になります。
- 女性・シニア人材が働きやすい現場環境の整備
- 特定技能「建設」(19業種が対象)による外国人材の受け入れ
- 建設業許可の取得・建設キャリアアップシステムへの加入など受け入れ要件の確認
特定技能制度で外国人材を受け入れるには、建設業許可の取得に加え、建設キャリアアップシステムへの加入や国土交通省による受入計画の認定など複数の要件を満たす必要があり、準備に時間がかかります。(出典:国土交通省)
対策③|DX・ICT活用による業務効率化
見積・積算業務のシステム化や施工管理アプリの導入によって、限られた人数でも業務を回せる体制を作れます。なかでも設計・間取り提案は、これまで人手と時間がかかっていた業務の一つです。AIによる設計支援ツールを使えば、初回商談の場で間取り提案までを完結させ、設計工数を大幅に削減できます。
設計・提案業務のDXは工務店のAI活用ガイドで具体的な始め方を解説しています。まどりLABO PROはこの効率化を目的としたAI間取り生成ツールです。
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対策④|外注・アウトソーシングの活用
設計・積算・事務作業など、自社で抱えきれない業務を外部パートナーに委託するのも現実的な選択肢です。繁閑差に応じて外部リソースを使い分ける発想が有効で、間取り図作成の外注については間取り図作成を外注する場合の費用相場と選び方で詳しく解説しています。
対策⑤|若手育成と技術継承の仕組み化
OJTだけに頼らず、マニュアル化や動画教育など、属人化しない育成の仕組みを作ることも欠かせません。建設キャリアアップシステムを使った技能評価の見える化は、若手のモチベーション向上にもつながります。
4. 対策が失敗する工務店の3つの共通点

ここまでの対策を実行しても、思うような効果が出ない工務店もあります。共通するのは、対策の「打ち方」に偏りがあるケースです。
共通点①|採用だけに頼る
求人媒体を増やす、採用条件を上げるといった「採用強化」だけに投資し、受け入れ体制を整えないまま採用を進める工務店は少なくありません。厚生労働省の調査(令和3年3月に高校を卒業して就職した人が対象)では、建設業に高卒で就職した人の3年以内離職率は43.2%(全産業平均38.4%)となっており、採用できてもすぐに離職してしまうケースが目立ちます。(出典:厚生労働省 新規学卒者の離職状況)
採用と定着はセットで設計する必要があります。特に効果が出やすいのは、次のような受け入れ体制です。
- 教育計画の明文化:入社後3か月の教育スケジュールを事前に書面化する
- メンター制度:先輩社員を1人メンターとして割り当て、質問しやすい環境を作る
- 定着面談:入社後1か月・3か月・半年の節目で面談し、早期の不安を拾う
共通点②|業務の属人化を放置する
特定のベテラン社員にしかわからない業務プロセスが残ったままだと、新しく採用した人材が定着しにくく、教育コストもかさみます。
- 特定の人にしかできない業務が多い
- マニュアルや手順書が整備されていない
- 担当者が休むと業務が止まる
業務フローの整理については工務店の業務フロー完全ガイドで改善の進め方を紹介しています。
共通点③|ツール導入で満足する
導入自体が目的化し、運用ルールが決まらないまま形骸化するケースも少なくありません。
導入後に誰がどう使うかまで、しっかりと決めておくことが、定着の分かれ目になります。
5. 工務店の人手不足に関するよくある質問

Q. 人手不足はいつまで続く?
建設業就業者の高齢化・若年入職者の減少という構造的な要因があるため、短期間での改善は見込みにくいとされています。 当面は人手不足を前提とした経営体制づくりが必要になります。
Q. 対策に使える補助金や支援制度はある?
人材確保・育成にかかる費用を支援する制度がいくつか用意されています。
- 人材確保等支援助成金
- 建設労働者確保育成助成金
- 人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース等)
詳細や要件は変更される場合があるため、申請前に各制度の公式ページや自治体の窓口で確認してください。
Q. 小規模な工務店でもDX・ICT活用は始められる?
大がかりなシステムでなくても、見積作成や情報共有をクラウドツールに置き換えるだけで効果が出るケースは多くあります。まずは業務量が多く、効果を実感しやすい1つの業務から試すのがおすすめです。
Q. 外国人材の受け入れは現実的な選択肢か?
特定技能制度を使えば建設19業種で外国人材を受け入れられますが、事前に満たすべき要件が複数あります(対策②参照)。準備に時間がかかるため、検討する場合は早めの情報収集がおすすめです。
6. まとめ|人と仕組みの両輪で人手不足を乗り越える

工務店の人手不足は、高齢化・労働環境・2024年問題という構造的な原因が重なって生じています。放置すれば受注機会の損失や離職の連鎖、技術継承の途絶えにつながりかねません。要点を振り返ります。
- 人手不足の背景には、高齢化・労働環境・2024年問題が重なっている
- 放置すると受注機会の損失・離職の連鎖・技術継承の途絶えを招く
- 労働環境改善・採用拡大・DX活用・外注・育成の5つの対策を組み合わせて実行する
- 採用だけに頼らず、仕組み化とセットで進めることが成功の分かれ目になる
自社に合う対策を一つずつ形にしていくことが、人手不足に負けない体制づくりの近道です。なかでも設計・提案業務は、AIの活用で工数を大きく削減できる領域です。
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まどりLABO編集部|代表 野口雄人

東大卒の設計士・一級建築士・エンジニアなどで構成。間取りが大好きなオタクたちの集団で、間取りが好きなあまり間取りをAIで自動生成できるサイトを作成しました。代表の野口は東京大学・東京大学大学院で建築学を専攻しました。