住宅業界の動向は?データで見る伸びる企業の条件
「このまま新築が減り続けたら、うちは大丈夫だろうか…」そんな不安を抱える工務店・住宅会社の経営者は少なくありません。新設住宅着工数の減少や資材費の高騰といったニュースを個別に見聞きしていても、全体像を数字でつなげて理解できている方は多くないはずです。
この記事では、公的統計や民間調査のデータをもとに、住宅業界の動向を数字で整理し、現状と今後10年の展望を明らかにします。そのうえで、データが示す「生き残る企業」の共通点から、自社が今から着手すべき具体策までを解説します。
この記事でわかること
- 新設住宅着工数がどれだけ減少しているかがわかる
- 2025年法改正が設計・確認申請業務にどう影響するかを理解できる
- 今後10年で伸びる企業と縮む企業の違いを学べる
- データに基づいた生き残り施策が身につく
1. 住宅業界の現状|データで見る市場縮小の実態

住宅業界の「今後」を考えるには、まず現状を正確な数字で押さえる必要があります。新設住宅着工数・人口構成・建築コストの3つの指標から、市場縮小の実態を確認しましょう。
住宅業界の現状を示す主要指標
指標 | 直近データ | 変化 |
|---|---|---|
新設住宅着工戸数(2025年度) | 71.1万戸 | 前年度比12.9%減・62年ぶりの低水準 |
単独世帯の割合(一般世帯に占める比率) | 2025年時点38.0% | 2050年に44.3%へ上昇見込み |
建設資材物価指数(東京・2015年平均=100) | 152.1 | 前年同月比6.2%上昇 |
(出典:国土交通省「新設住宅着工統計」をもとに総合資格naviが作成した記事、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、一般財団法人建設物価調査会「建設資材物価指数」を参考に作成)
新設住宅着工数はどれだけ減っているか
国土交通省が公表した2025年度の新設住宅着工戸数は71万1,171戸で、前年度比12.9%減となりました。これはリーマンショック後の水準を下回り、1963年度以来62年ぶりの低水準です。利用関係別の内訳は以下のとおりです。
- 持家:19万5,111戸・前年度比12.6%減
- 貸家:30万8,906戸・前年度比13.5%減
- 分譲住宅:20万563戸・前年度比12.6%減(3年連続の減少)
いずれの区分も前年度を下回っており、住宅需要全体が構造的に縮小していることがわかります。
人口減少・世帯構成の変化はどこまで進んでいるか
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、一般世帯に占める単独世帯の割合は2025年時点で38.0%、2050年には44.3%まで上昇する見通しです。
- 単独世帯の割合:2025年38.0%→2050年44.3%
- 単独世帯数のピーク:2036年に約2,453万世帯
ファミリー世帯を主な対象としてきた新築需要は、この世帯構成の変化によって今後も縮小圧力を受け続けると考えられます。
資材費・人件費の高騰はどこまで進んだか
建設物価調査会の建設資材物価指数(東京・2015年平均=100)は、直近で152.1となり、前年同月比6.2%上昇しています。ウッドショック以降の需給逼迫に加え、円安や人材不足が重なり、価格が高止まりしている状態です。
- 建設資材物価指数:152.1(前年同月比6.2%上昇)
- 建設業倒産件数:2025年に2,021件(前年比6.9%増・4年連続増加)
(出典:建設物価調査会「建設資材物価指数」、帝国データバンク「建設業の倒産動向」)
資材費だけでなく物流費・人件費の上昇も、工務店の原価を圧迫しています。人手不足の影響はこちらの記事でも解説しています。
2. 2025年法改正は業務にどう影響するか

住宅業界の縮小に追い打ちをかけているのが、2025年4月に施行された建築基準法・建築物省エネ法の改正です。制度の詳細は建築基準法の改正はいつ?2025年4月施行を工務店向けに解説で扱っているため、ここでは要点と業務への実際の影響に絞って解説します。
省エネ基準義務化と4号特例見直しの要点
2025年法改正の主なポイント
- 対象拡大:300㎡以上の中・大規模建築物のみが対象だった省エネ基準適合義務が、住宅を含むすべての建築物に拡大
- 基準値:断熱等級4以上・一次エネルギー消費量等級4以上を満たす必要がある
- 4号特例の見直し:構造規制の合理化にあわせ、確認申請時に省略できていた審査項目が縮小
設計・確認申請業務における変更点
今回の改正により、建築確認の際に省エネ適合性審査が新たに実施されるようになりました。審査に通らなければ、着工そのものができません。
- 所管行政庁または登録省エネ判定機関への省エネ性能確保計画の提出が必須に
- 審査に通らなければ着工不可
- 設計段階での断熱・エネルギー計算の織り込みが増加
設計担当者は、これまで以上に早い段階から断熱性能の検討に関わる必要が出てきています。
資材・工期コストへの跳ね返り
新築住宅低迷の要因の一つに「建築確認の長期化」も挙げられます。
- 確認申請から着工までの期間の延伸
- 断熱材・設備の仕様変更によるコスト増
審査項目が増えたことで工期全体が後ろ倒しになるケースが増え、省エネ性能を満たすための仕様変更が資材コストの増加にも直結しています。
3. 住宅業界の今後10年|伸びる企業と縮む企業の分かれ目

市場が縮小するなかでも、すべての企業が一様に厳しくなるわけではありません。データを見ると、今後10年は「伸びる企業」と「縮む企業」の差がこれまで以上に開く可能性が高いといえます。
新築市場と中古・リフォーム市場の対比
市場 | 直近の動き |
|---|---|
新築(持ち家・分譲・貸家) | 2025年度は前年度比12.9%減、62年ぶりの低水準 |
中古住宅(フラット35利用者調査) | 利用割合34.8%・前年度比7.4ポイント増、直近10年で最高 |
リフォーム(非住宅分野) | 2024年度受注高9兆6,984億円・前年度比7.7%増 |
リフォーム(住宅分野) | 2024年度受注高4兆1,318億円・前年度比3.3%減 |
(出典:住宅金融支援機構「2024年度フラット35利用者調査」、総合資格navi掲載の国土交通省調査データをもとに作成)
新築市場の縮小と中古・リフォーム市場の伸長
フラット35利用者調査では、中古住宅の利用割合が34.8%と直近10年で最高になりました。ただ、リフォーム市場を住宅分野だけで見ると受注高は前年度比3.3%減となっており、伸びているのは非住宅分野(7.7%増)が中心です。
- 中古住宅の利用割合:直近10年で最高水準
- 住宅分野のリフォーム受注高:前年度比3.3%減
「リフォームに転換すれば安泰」と単純化できる状況ではなく、住宅系企業がリフォーム需要を取り込めるかどうかは提案力次第という側面が大きいといえます。
資本力・DX投資力が生む大手と中小の格差
建設業の倒産動向を見ると、物価高騰や人材確保難の影響は資本体力の小さい企業に偏りやすい傾向があります。
- 大手:BIM・AI活用による設計効率化にすでに投資余力を割いている
- 中小:同様の投資判断を後回しにしがちで、原価高騰の影響を受けやすい
数字に基づいた危機感を経営判断につなげられるかどうかが、今後の明暗を分ける分岐点になります。
野村総合研究所などの将来予測データ
野村総合研究所は、2040年度の新設住宅着工戸数を61万戸と予測しています。これは2025年度比で約18%の減少にあたります。
- 持家:14万戸
- 分譲住宅:18万戸
- 貸家:29万戸
市場全体がこの規模まで縮小することを前提に、今のうちから事業構造を見直す企業と現状維持を続ける企業とで、10年後の差はさらに開くと考えられます(出典:野村総合研究所)。
4. データが示す生き残り企業の共通点|今から着手すべき施策

「対策の必要性はわかっていても、何から手をつければいいかわからない…」という声も少なくありません。ここまでのデータから見えてくる生き残り施策は、大きく3つに整理できます。
規模別に見る生き残り施策の優先度
施策 | 中小工務店 | 中堅〜大手 |
|---|---|---|
設計業務のDX化・原価管理強化 | 優先度高(投資額を抑えて着手可能) | すでに着手済みの企業が多い |
リフォーム・空き家活用 | 地域密着の強みを活かしやすい | 非住宅分野への展開が中心 |
規格化・標準化 | 原価率の安定に直結 | すでに一部商品で導入済み |
設計業務のDX化・原価管理強化(中小工務店でも着手しやすい施策)
間取り作成・見積作成にAIを活用したツールを導入すれば、大きな初期投資をかけずに設計工数を削減できます。
- ヒアリングと同時に間取り・見積を自動生成
- 商談中にその場で修正・提示
商談の場でプランを提示できれば、競合との比較検討にかかる時間を短縮し、失注リスクを減らすことにもつながります。設計業務の効率化そのものについてはこちらの記事で具体的な方法を解説しています。
リフォーム・空き家活用による事業多角化
非住宅分野のリフォーム市場は前年度比7.7%増と伸びていますが、住宅分野は微減です。新築中心だった工務店がリフォーム・空き家活用に参入する際は、既存の営業・設計体制をそのまま流用するのではなく、リフォーム特有の提案手法を別途身につける必要があります。
- 空き家の改修・再生
- 断熱性能を高めるリフォーム提案
規格化・標準化によるコスト構造の見直し
間取り・仕様をある程度パターン化し、規格化することで、資材の一括調達や工程の効率化がしやすくなります。
- 資材の一括調達によるコスト圧縮
- 工程の標準化による工期短縮
資材費・人件費の高騰が続くなかでは、原価率を安定させる仕組みそのものが競争力になります。工務店経営全体の改善策についてはこちらの記事で5つの施策として詳しく紹介しています。
5. 住宅業界の動向に関するよくある質問

Q. 住宅業界は今後もっと厳しくなりますか?
新設住宅着工戸数は今後も減少傾向が続くと予測されています。野村総合研究所の予測では2040年度に61万戸まで減少する見通しです。ただ、市場全体が縮小するなかでも、次の分野は相対的に影響を受けにくいと考えられます。
- 中古住宅市場
- 非住宅分野のリフォーム
Q. 中小工務店が今すぐ着手できる対策はありますか?
大きな投資を伴わずに着手できる施策としては、以下のようなものがあります。
- 設計・見積業務のDX化(AIツールの活用など)
- 規格化・標準化による原価率の管理強化
- 地域密着型のリフォーム・空き家活用提案
Q. リフォーム市場への参入は本当に有効ですか?
住宅分野のリフォーム受注高は前年度比3.3%減となっており、リフォームに参入すれば必ず伸びるという単純な状況ではありません。非住宅分野は7.7%増と好調なため、自社の強みがどちらの領域に活かせるかを見極めたうえで参入を検討することが大切です。
6. まとめ|データを踏まえて自社の立ち位置を見極める

ここまでのデータをまとめると、次のことがいえます。
- 新設住宅着工戸数は2025年度に71.1万戸まで減少し、62年ぶりの低水準となった
- 2025年法改正により、設計・確認申請業務の負担とコストが増加している
- 中古・リフォーム市場、非住宅分野は相対的に伸びており、新築中心の企業ほど影響を受けやすい
- 資本力・DX投資力の差が、今後10年の企業間格差を広げる要因になる
市場全体の縮小は避けられない一方で、データに基づいて自社の立ち位置を見極め、早く動いた企業から差をつけられる状況でもあります。まずは自社の設計・営業プロセスのどこに時間がかかっているのかを可視化してみることが、生き残り戦略を考える近道です。
まどりLABO PROでは、初回商談の場でAIが間取り・3Dプランをその場で生成し、提案スピードと工数を大きく変えることができます。現在はPoC(共同検証)パートナーを募集していますので、住宅会社の設計・営業業務をAIで効率化したい方は、ぜひまどりLABO PROの詳細をお問い合わせください。
工務店・ハウスメーカー向け
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まどりLABO編集部|代表 野口雄人

東大卒の設計士・一級建築士・エンジニアなどで構成。間取りが大好きなオタクたちの集団で、間取りが好きなあまり間取りをAIで自動生成できるサイトを作成しました。代表の野口は東京大学・東京大学大学院で建築学を専攻しました。