【完全解説】農地に家を建てるには?条件と費用・手続きを徹底ガイド

農地に家を建てたいと考えた時、最初にぶつかるのが「そもそも建築可能なのか」という疑問です。
自治体ごとに異なる複雑な区分や調査方法に悩み、時間だけが過ぎていませんか?
この記事では、費用や手続きの見通しが立たず悩んでいる方へ、その「見えない不安」を解消し、具体的に一歩踏み出すための知識をお届けします。
この記事を読むメリット
- 自分の農地に家を建てられる可能性を、区域・農地区分から判断できる
- 相続農地/購入予定地/農家・非農家などケース別の違いを理解できる
- 農地転用にかかる費用と期間の目安が分かる
- 家づくり全体の流れの中で「いつ」動くべきかを把握できる
- 必要書類や事前準備をチェックリスト形式で確認できる
- 建てられるか判断するフローチャートで自分の状況を整理できる
- 例外的に許可される可能性や回避策まで分かる
1. 農地に家は建てられる?まず確認すべき「区域」と「農地区分」

農地に家を建てたい時、最初にぶつかるのが「そもそも建築可能なのか」という疑問です。 実は、建築の可否は主に以下の3つの要素の掛け合わせで決まります。
- ① どのエリアにあるか
- ② 農地のランクは何か
- ③ あなたの状況(農家か非農家か等)
どれか一つでもNGだと家は建ちません。まずはこの3要素を整理し、全体像をつかみましょう。
結論 |
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家が建つかどうかは、単に「農地だからダメ」ではなく、「市街化調整区域かどうか」や「相続か購入か」といった条件の組み合わせで決まります。自分に当てはまる条件を整理することがスタートラインです。 |
【要素1】区域区分:市街化区域?それとも市街化調整区域?
まず、その土地が都市計画法でどう区分されているかを確認します。
区域の種類 | 特徴 |
|---|---|
市街化区域 | 街を広げるエリア。すでに住宅が多く、インフラが整っている地域。「届出」で済むことが多く、スムーズ。 |
市街化調整区域 → 低(▲) | 自然や農地を守る地域。原則建築不可。「開発許可」という特別な許可が必要で、難易度は高い。 |
「市街化区域」なら、次の【要素2】はあまり気にせずとも建築できる可能性が高いです。問題は「市街化調整区域」だった場合です。
【要素2】農地区分:「転用できない3つのケース」
市街化調整区域にある農地の場合、その農地の「ランク」が重要になります。 以下の3つに該当する場合、国のルールで厳格に守られているため、たとえ所有者であっても家を建てることは原則できません。
▼転用が原則認められない農地
農地 区分 | 概要・特徴 |
農用地 区域内 農地 (通称: 青地) | 「農業振興地域整備計画」で指定された、将来にわたり農業を行うべき土地。 ※ここから外す手続き(農振除外)は、年単位の期間と厳しい要件が必要です。 |
第1種 農地 | 10ヘクタール以上の集団農地や、土地改良事業の対象となった優良農地。 |
甲種 農地 | 市街化調整区域内にありながら、特に生産性が高い機械化された農地など。 |
逆に、「第2種農地(市街地になりつつある区域)」や「第3種農地(市街地の区域)」であれば、許可が下りる可能性は高くなります。
参考リンク:農林水産省「農地転用許可制度について」
【要素3】あなたの状況:相続・購入・農家などの違い
土地の条件に加え、「あなた自身の状況」によってもハードルが変わります。
A. 相続した農地の場合
- 注意点: 先祖代々の土地は、前述の「青地(農用地区域)」である確率が高いです。
- メリット: 親が農家であれば、市街化調整区域でも「分家住宅」として特例で認められる可能性があります。
B. これから購入する場合
- 注意点: お金を払った後に「許可が下りない」とならないよう、契約書に「許可が下りなければ白紙に戻す(停止条件付契約)」という条文を入れることが必須です。
- 対策: 最初から「青地」や「第1種農地」を避けて探すことが鉄則です。
C. 農家か非農家(サラリーマン)か
- 農家:「農家住宅」として、調整区域でも比較的建築が認められやすいです。
- 非農家:原則通り厳しく審査されます。「既存宅地(過去に家があった)」などの条件がない限り、調整区域での建築は困難です。
自分の土地の区分を調べる方法(3つのステップ)
要素1-3を通して、「家が建てられるか」を判断するには、以下の手順で「場所(エリア)」と「法的な扱い(地目)」を順番に調べる必要があります。
1. まず「区域区分」を調べる
市役所やWebサイトで「都市計画図」を見て、大まかなルールを確認します。
- 確認すること: 自分の土地が「市街化区域(建てやすい)」か「市街化調整区域(厳しい)」のどちらの色に塗られているか。
2. 次に「地目(ちもく)」を調べる
法務局で「登記事項証明書(登記簿)」を取得して確認します。
- 確認すること: たとえ見た目が更地や雑種地であっても、登記上の地目が「田・畑」になっていれば、農地法の許可が必須になります。見た目で判断せず、必ず書類で確認しましょう。
3. 最後に「農地区分」を問い合わせる
上記で「調整区域」や「農地」だった場合は、詳しく調べる必要があります。
- 確認すること: 「農業委員会」へ問い合わせ、「農地区分のランク(青地や第1種など)」と「転用の見込み」を聞いてください。これが最終的な判断材料になります。
このように、土地の場所(区域・農地区分)と、あなたの事情(農家かどうか等)をセットで考えることで、現実的な可能性が見えてきます。
2. 農地転用にかかる費用と期間|地域差・パターン別の目安をシンプルに解説

「農地は安く買える」というのは事実ですが、宅地にするためには通常の土地購入にはない「見えないコスト」と「長い待ち時間」が発生します。 場合によっては、「安く農地を買ったのに、造成費や手続き費用を含めると結局高くついた」というケースも珍しくありません。
予算オーバーや入居遅れを防ぐために、費用の内訳とスケジュールの現実的な目安を押さえておきましょう。
結論 |
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費用は「測量と造成」で大きく変動します。また、期間は「市街化区域(1〜2ヶ月)」か「調整区域(半年以上)」かで全く異なります。余裕を持った計画が必要です。 |
基本となる費用の内訳
一般的に必要になる費用は次の3つです。
項目 | 目安金額 | 内容・注意点 | |
|---|---|---|---|
許可申請費用(行政書士報酬) | 10〜30万円 | 農業委員会への申請代行費用。市街化調整区域で「開発許可」も必要な場合は、さらに20万円ほど上乗せになる場合があります。 | |
測量・分筆費用(土地家屋調査士報酬) | 30〜80万円 | 農地は境界が曖昧なことが多く、正確な測量が必須です。広い農地の一部だけを宅地にする「分筆(ぶんぴつ)」を行う場合も費用がかかります。 | |
農地転用決済金(改良区への支払い) | 数万〜数十万円 | 土地改良区(水利組合など)に入っている農地の場合、転用時に「決済金」や「除外申請」の費用を請求されることがあります。 | |
インフラ整備・造成費 | 100万円〜 | 上下水道の引き込み工事や、地盤改良、盛土(もりど)などの工事費。土地の条件で大きく変わります |
行政書士への依頼は必須ではありませんが、書類の量が膨大なため、多くの方が依頼しています。また、造成費は土地の状態で数百万単位の差が出るため、購入前に建築会社に見積もりを取るのが鉄則です。
区域や土地条件による費用の違い
次の要素で費用が変わることがあります。
市街化区域か市街化調整区域か
- 調整区域は審査が慎重になるため、追加の書類が必要になり、手間が増えるケースがあります。
地形や水はけの状態
傾斜地や水はけの悪い土地は、造成費が大きく増えることがあります。
道路や上下水道の整備状況
インフラが整っていない土地は、整備費が上乗せになります。
費用の幅が大きいため、「まずは土地の状態を知る」ことが第一歩になります。
手続き完了までの期間の目安
農地転用の許可は、いつでも申請できるわけではありません。毎月の「締切日」があり、それを過ぎると翌月回しになります。 区域によって審査期間が大きく異なるため、以下の合計目安を参考にしてください。
▼着工できるまでの期間目安
区分 | 書類準備 | 申請〜審査 | 合計期間(目安) |
|---|---|---|---|
市街化区域(届出) | 2〜4週間 | 1〜2週間 | 約 1.5ヶ月 |
市街化調整区域(許可) | 1〜2ヶ月 | 2ヶ月〜半年 | 約 4〜8ヶ月 |
市街化調整区域の場合は、関係機関との調整が必要になることがあり、期間が長くなる傾向があります。
スケジュール遅延を防ぐためのコツ
- 早めに都市計画図と農地の区分を確認する
- 造成の必要性を事前に見てもらう
- 必要書類をまとめておく(身分証、土地の資料、図面など)
少し準備をしておくだけで、手続きの停滞を防ぎやすくなります。
農地転用にかかる費用と期間は、土地ごとの差が大きいです。大まかな目安を把握しつつ、早めに土地の状況を確認することで、家づくりの計画が進めやすくなります。
3. 農地転用の手続きと流れ|どの順番で進めれば良い?(住宅づくり全体のスケジュール付き)

農地転用の許可が下りないと、家の建築確認申請も出せません。手続きが原因で着工が数ヶ月遅れることを防ぐため、土地探しや住宅会社選びと「同時進行」で進めることが重要です。
結論 |
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手続きは家づくりの初期段階から並行しましょう。 特に市街化調整区域は審査に時間がかかるため、 早めに着手し、スケジュールの遅れを防ぐことが大切です。 |
農地転用の全体フロー
基本的な流れを整理すると、次のようになります。
手順 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
1. 区分確認 | スムーズ | 必須(事前相談が重要) |
2. 書類準備 | 必要 | 必要(膨大な量になることも) |
3. 申請・審査 | 約1〜2週間 | 長期化しやすい(数ヶ月〜) |
4. 地目変更 | 転用後に実施 | 転用後に実施 |
市街化区域では手続きが比較的シンプルですが、調整区域は関係部署との調整が必要になることがあり、時間がかかる場合があります。
家づくり全体では「いつ動くべきか」
家づくりの流れと照らし合わせると、次のタイミングで動くのがおすすめです。
- 土地を「候補にした」段階:すぐに区分を調べ、「建てられない土地」を早めに除外します。
- 住宅会社への「相談」段階:図面作成や調査が必要なため、この時期から書類準備を始めます。
- 基本設計が「まとまる」頃:図面(配置図など)が揃ったタイミングですぐに申請を出します。
土地探しから着工までの流れの中に、転用手続きを早めに組み込むことで、後戻りを防げます。
事前に準備しておきたい書類チェックリスト
手続きの停滞を防ぐため、ご自身で手配できる書類は早めに揃えておきましょう。
- 土地の登記簿謄本(オンライン取得も可能です)
- 公図・地積測量図
- 土地の現況が分かる写真
- 申請者の本人確認書類
- 住宅会社作成の図面(配置図・平面図など)
これらが揃っていると、行政書士や自治体とのやり取りがスムーズに進みます。
農地転用は、家づくりのスケジュールを左右する重要な手続きです。早めに区分を確認し、住宅会社と連携して準備を進めることで、着工までの期間を短縮できます。
4. 最終チェック|建てられるかどうか判断するフローチャート&注意点まとめ

ここまでの条件を整理すれば、許可の可能性が見えてきます。以下のフローチャートを使って、建築可否の方向性を最終チェックしてみましょう。
【保存版】建築可能性・簡易判定フロー
STEP | 質問 | YES の判定 | NO の場合 |
1 | 区域区分 その土地は「市街化区域」ですか? | ◎ ほぼ可 (届出でOK) | STEP 2へ |
2 | 調整区域の例外 「調整区域」の場合、あなたは農家ですか? | ○ 可能性あり (農家住宅など) | STEP 3へ |
3 | 非農家の特例 「分家」や「既存宅地」の条件を満たしますか? | △ 要相談 (条例次第) | × 困難 (原則不可) |
4 | 農地区分 その土地は「青地」や「第1種」ではないですか? | ○ 審査へ (第2・3種なら希望あり) | × 困難 (除外が必要) |
5 | 資金・設備 造成やインフラ費を含めた予算は足りますか? | GO! (申請準備へ) | STOP (計画見直し) |
例外が認められるケース(一例)
- 家族が農業を継続する場合
- 集落の維持に必要と認められる場合
- 周辺に住宅が多く、地域の支障にならない場合
※自治体によって基準が異なるため、窓口での確認が必須です。
見落としがちな3つの注意点
- 固定資産税の増加:宅地化すると、農地時代より税額が数倍〜数十倍に上がります。
- 造成費の追加リスク:傾斜や排水状況によっては、予想以上の工事費がかかることがあります。
- 地目変更のタイミング:「地目変更登記」は、転用許可後(家が完成した後)に行います。
最終判断は自治体によりますが、条件を整理すれば方向性はつかめます。不安な点は早めに相談し、確実な計画を立てましょう。
5. まとめ

本記事では、農地に家を建てるための条件や手続きを解説しました。 農地活用は一般的な土地購入よりもハードルが高いのは事実ですが、「区域区分」と「農地種別」という入り口さえ間違えなければ、決して不可能な夢ではありません。まずは自治体で正確な情報を集め、不安を一つずつ「計画」に変えていくことから始めましょう。
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複雑な手続きを一つひとつクリアし、農地ならではの広い庭や豊かな暮らしを実現してください。この記事が、理想の家づくりへの確かな一歩となることを願っています。

まどりLABO編集部|代表 野口雄人

東大卒の設計士・一級建築士・エンジニアなどで構成。間取りが大好きなオタクたちの集団で、間取りが好きなあまり間取りをAIで自動生成できるサイトを作成しました。代表の野口は東京大学・東京大学大学院で建築学を専攻しました。



